現地校と日本人学校どちらがいいの?メリットとデメリットを知って最善の選択を!

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グローバル化が進む昨今、仕事の都合で海外赴任をしなければならなくなった、という方も多いでしょう。
海外で成功をおさめれば、会社の発展や自らのキャリアアップにつながることは間違いありません。チャンスが巡ってきたら、ぜひチャレンジしたいですよね。

しかし、数年単位の海外赴任となれば、心配なのは家族のことです。とくにお子さんがいらっしゃるご家庭では、学校のことや友人関係のこと、将来の進路など、悩まれることも多いかと思います。
そこで、今回はお子さんを連れて海外赴任することになった際、学校選びやお子さんのケアはどうしたらいいのかをまとめていきます。

a.現地校?日本人学校?メリット・デメリットは

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まずはお子さんが毎日を過ごす学校ついて見ていきましょう。海外でお子さんを学校に入れるとき、取り得る選択肢は大きく分けて3つあると思います。

■現地校(+日本語補習校)

ひとつめは、現地の学校へ通うという選択肢です。メリットとして一番大きいのは、やはり言語の習得の面でしょう
何年滞在するかにもよりますが、生活していくうえで必要なことばは約2年で習得できるといわれています。
現地のことばに触れる機会を多く持たせたいと思うのであれば、現地校は有力な選択肢ですね。
北米では、移民が多いこともあってかESL(English as a Second Language=第二言語としての英語)のクラスが設けられていることが多いです。英語が母語でない生徒だけを集めて、第二言語として英語を習得できるよう指導をしてくれます。
また、特に公立校では費用が安かったり、家の近所に友達ができ放課後も楽しく過ごせたりというメリットもあります。

デメリットとしては、初めはお子さんへの負担が大きいこと、赴任先の地域があまり裕福でない場合はお子さんの教育上あまりよくない可能性があること、学校や地域への積極的な参加が求められる場合も多く、親も先生や友達の親と現地のことばでコミュニケーションを取らなければならないこと、などが挙げられます。また、日本語に触れる機会が減ってしまうため、将来日本へ帰国するとなった時に、同年齢の日本で育ったお子さんに比べて日本語が上手に使えない可能性がある、という不安もありますね。慣れない環境へ毎日出向くという観点から、お子さんにもご家庭にも負担が大きい、というのが最大のデメリットと言えるでしょう。

なお、現地校へ通う場合は、日本語の学習の機会として日本語補習校(補習授業校)へも通わせると良いでしょう。日本語補習校はたいてい土曜日のみの週1日で、日本で使われている教科書を使って国語や算数(場合によっては理科・社会も)の授業を受けることができます。
お子さんにとっては、日本人の友達ができたり、現地校のストレスを発散できたりと、学習面以外でもプラスの面が多いようです。
しかし、やはり日本語補習校へ通わせても日本語に触れる機会は日本で暮らす場合に比べて圧倒的に少ないですので、ご家庭で読み聞かせをしたり、漢字の勉強をさせたりなど、親のサポートは欠かせません。

■インターナショナルスクール(+日本語補習校)

赴任する国が欧州やアジア圏など、現地のことばが英語でない場合、インターナショナルスクールも選択肢に挙がると思います。インターナショナルスクールのメリットは、様々な国の生徒がいるので国際性が身に着くこと、言語面のサポートも手厚いこと、学校とのコミュニケーションが非英語圏の現地校に比べて取りやすいこと、などがあります
。将来のことを考えて現地語よりも英語を身につけさせたい場合は、インターナショナルスクールに入れるのが良いですね。

デメリットは、なんといっても費用が高いことです。年間200万~300万円ほどかかるといわれており、会社側からの補助等がないとなかなか難しいかもしれません。また、昨今インターナショナルスクールの人気はとても高いため、編入待ちの人も多く、望んでも入学できない可能性があります。
その他のデメリットは上記の現地校と同じく、どうしてもお子さんへの負担がかかることでしょう。いずれにせよ、ご家庭でのサポートは必要となります。

■日本人学校

最後は、全日制の日本人学校という選択肢です。日本人学校は私立ですが、文部科学省に認定されており、日本のカリキュラムにしたがって教育を受けることができます。補習校と違い、週5日通います。
メリットは、ことばが通じる環境で安心・安定して教育を受けられること、日本のカリキュラムで日本に住むお子さんたちと同じ教育を受けられるため、日本に帰国する際にも他のお子さんと学力の差が生まれにくいこと、親の立場からも学校や他の保護者の方とコミュニケーションがとりやすいこと、などがあります。また、日本人学校は通常日本からの駐在員が多いところに設置され、通っているのもほとんどが駐在員のお子さんです。
駐在員は比較的裕福なことが多く、そのお子さんもふんだんに教育を受けて育っているいわば“優等生”が多いです。国や地域にもよりますが、日本人学校は1クラスの人数が少ないことも多く、教師1人に対して生徒が10人程度ということもあります。まわりも優等生が多いため、質の高い教育を受けることができるところもメリットの一つでしょう。

デメリットとしては、やはり語学の面ですね。日本人学校でも現地のことばを学ぶ時間があることも多く、英語圏ではESLも行われていますが、他国語に触れる時間は現地校やインターナショナルスクールに比べて圧倒的に少ないです。もちろん日本で生活するのに比べたら、特に耳からのインプットは多いので、リスニング能力は向上するかもしれません。日本人学校は午後3時くらいに終わりますので、そのあと語学スクールに通ったり、地元のスポーツクラブに入ったりすると、現地のことばもある程度は身に付くでしょう。
他に、日本人学校はあまり日本人がいないところには建てられませんので、いわゆるマイナー地域ではそもそも日本人学校に通うという選択肢がない場合もあります。また、インターナショナルスクールに比べたら安いですが、ある程度の費用がかかることも挙げられます。

b.どこに入れるべき?学年別に考察!

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さて、3つの選択肢を挙げましたが、いずれにもメリット・デメリットがあることはおわかりいただけたかと思います。次に、言語の発達の観点や進学等の観点を踏まえながら、各選択肢について学年別に考察していきましょう。

■小学校低学年~中学年

小学校低学年は、言語を確立していく時期です。先ほど、生活していくうえで必要なことば(“生活言語”とも言います)は約2年で習得できる、と述べましたが、生活を離れ、物事を論理的に理解したり、あるいは自分で論理を組み立てたりといった、抽象的な概念について考えられることば(“学習言語”とも言います)の習得には約5年かかるといわれています。小学校低学年から中学年にかけて、しっかりと思考していくための土台づくりをしておかないと、いつまでたっても抽象的な思考ができるようになりません。小学校で現地校に行き、数年たって現地語をペラペラしゃべっているように見えても、実は全然文章が読めなかったり、論理的な思考ができなかったりすることがあるのです。
その抽象的な思考の土台づくりのために必要なのがことばです。この時期を、ことばによる土台づくりができずに過ごしてしまうと、母語も第二言語もペラペラ話せるけどどちらの言語でも抽象的な思考ができない、いわゆる“セミリンガル”(あるいは“ダブルリミテッド”)という状態に陥ってしまう危険性があるのです。

そうならないために必要なのは、どちらかの言語で抽象的な思考の土台を作ることです。小学校低学年から中学年であれば、母語の生活言語はほぼ習得できているでしょう。そのまま日本語で思考能力をつけさせようと思えば、やはり日本人学校が適していますね。現地校やインターナショナルスクールに入れる場合は、親がまずはたくさん日本語を浴びせかけ、さらにたくさんの日本語の本を読ませたりするほか、塾などに通わせて日本語でも教育を受けさせ続ける必要があります。これはお子さん本人にもかなりの努力を要することでしょう。あるいは、英語や現地語で思考能力をつけさせる、という手もあります。その場合、お子さんはどんどん日本語を忘れていき、もしかすると親とのコミュニケーションも難しくなってしまうかもしれません。将来的に日本語を“第二言語”として学ぶことはできますが、母語話者と同じように日本語を使うことは難しくなるでしょう。
小学校低学年から中学年くらいであれば、お子さんの性格にもよりますが、割とどんな環境にも慣れやすいと思います。だからこそ、言語面もしっかりケアしてあげる必要があるでしょう。

■小学校高学年

小学校高学年は、ちょうど思春期に差し掛かる時期です。
周りとの違いを気にしたり、できないことに劣等感を抱いたり、精神的にナイーブになりがちです。また、言語面も、学習言語を確立しどんどん思考力を深めていく時期にあたります。この時期にことばがわからないのは相当のストレスになるでしょう。しかし、逆にいえば自我を確立し始め、自ら積極的に外の世界に飛び出そうとするかもしれません。
日本語での学習言語はある程度習得できているでしょうから、日本語で本を読んだりして思考することを続けつつ、現地校やインターで別の言語に触れるのも良いかもしれません。

母語の獲得にはいわゆる“臨界期”があると言われており、この時期を過ぎるとことばの習得ができなくなる、といわれていますが、第二言語習得にも臨界期はあるといわれており、一般的に思春期あたりまでだとされています。この時期に第二言語に触れれば、母語に近い言語能力を獲得できる可能性もあります。

小学校高学年あたりになると、そろそろ高校受験のことも考えなければならないでしょう。帰国子女枠を設けている学校も、多くは帰国後2年以内でなければ帰国子女として認めない、3年以上の滞在が必要、など条件があります。帰国子女として受験をしないのであれば、日本で学校に通うお子さんたちと一緒に受験をしなければなりませんので、そのあたりも考慮しながら学校選びを進める必要がありますね。

■中学校

中学生になると、様々な思考も確立してきており、ある程度自分で物事を判断できるようになっていると思います。親に強制されるのを嫌う時期でもありますので、学校を選ぶ際には、様々な選択肢を提示し、将来のことも一緒に考えながら決めるのがいいですね。

ちなみに、現地で中学校に通う場合は卒業できる時期に注意する必要があります。
なぜかというと、日本で高校に入学する場合、一般的には“中学校を卒業した”、という証明が必要となるからです。
たとえば、アメリカは9月が新年度ですね。日本からアメリカの学校へ転入する際は、半年遅らせて入るのが一般的です(中2の5月に来るならアメリカの7th grade(日本で言う中1)に入り、9月に8th gradeに進級する、ということ)。
そうすると、日本の高校に入学する4月の時点で、まだ中学を卒業できていないことになってしまいます。
このままでは日本の高校に入学できませんので、たとえば帰国を早めて少しの間日本の中学に通い卒業するか、あるいは日本人学校に編入して卒業する必要が出てきます。
もちろん、現地で7月まで通い、中学を卒業してから日本に帰国し2学期から高校に編入する、ということも可能ですが、9月入学の枠を設けている高校は少なく、さらに編入生をとる人数もかなり少ないです。そういったことも考慮しながら、学校選びをするといいでしょう。

■高校

高校生ともなれば、もう大人の第一歩を踏み出しています。帯同する・しないも含めて本人とよく相談して決めるといいでしょう。ちなみに、日本人学校は中学校までしかありませんので、選択肢としては現地校かインターナショナルスクール、あるいは在外日本人高校(慶応義塾ニューヨーク学院や早稲田渋谷シンガポール校など、ほぼ寮生活)となります。

c.こどもの気持ちを大切に

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以上、メリット・デメリットの観点と言語習得・進学の観点から学校選びについて考察してきました。
最後に、筆者の経験を少しお話します。筆者は中学1年のなかばから卒業まで、米国で暮らしました。
日本人学校に通い、週1程度、英会話に通っていました。中2の夏から現地にある日本人向けの受験塾に通い、高校は日本の私立に“日本人学校枠”で入学しました。英語は人より少しできるかな、程度です。
今となっては、あのころ現地校に通っていればもっと英語が話せるようになったのかな、と思いますが、当時の自分は異国で暮らすのが嫌でたまらなく、現地校に通うなんてとんでもないという気持ちでしたので、選択は間違っていなかったと思います(親はどちらか選ばせてくれました)。ちなみに、向こうでの暮らしは本当に楽しく、日本人学校での生活もとても充実していて、自分にとって一生で一番濃い2年半を過ごしたと感じています。

これから海外に赴任される方は、様々な不安をお抱えになっていると思います。
しかし、向こうでの生活はきっとご自身にとってもお子さんにとってもかけがえのない経験になるでしょう。
学校選びについて様々述べましたが、いずれにしろお子さんの気持ちを第一に考えるのが最優先です。親しんだお友達と離れ、ことばも通じない土地で暮らすというのは、子供にとっては大人が考える以上に怖いものです。
「すぐ慣れるでしょ」とあまり楽観的に考えず、かといってあれやこれやと命令しすぎず、しっかりとお子さんの声を聞き、寄り添って考えてあげるようにしてくださいね。

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